🌎Shellの新しい投資先/Seaspiracyレビュー
04/12 bility newsletter
🤔今日のニュースレターは…?
Shellの新しい投資先(3min read)
気候変動へのアクションができるフィンテックサービス(3min read)
3Dプリンターから生まれるプラントべースミート(2min read)
Netflix "Seaspiracy" サステナブルな漁業は存在するのか?(4min read)
🛫アルコールをジェット機燃料に変える技術。CO2排出量が莫大な航空業界に光…?(3min)
エネルギー大手Shellが、アルコールをジェット燃料に変えるプロセスを握るLanzaTechに投資することが4月6日に公開された。LanzaTechは、一酸化炭素、二酸化炭素、水素を含むガスを微生物により発酵させエタノールを生成し、そのエタノールをジェット燃料などのクリーンエネルギーや他の化学品に転換する処理技術を持つ。現時点で微生物の発酵により排気ガスから製品を作り出し、商業化する段階まできているのはこの会社のみであると、同社社長は2019年後半のインタビューで話している。影響力あるイノベーションである。
そのLanzaTechと初めてパートナーシップを結んだ会社は、なんと日本企業である。2019年の全日本空輸株式会社との契約を初め、その後はSuncor Energy、三井物産、British Airwaysなどが戦略投資家として出資している。「戦略...投資家」というと、少しいやらしく聞こえる部分もあるが、航空企業は自社では手に負えない気候変動への影響を必死に抑えようとしている。その努力は認めるべきであろう。
(Lanza Tech HPより)
LanzaJetの持続可能な航空燃料(業界用語:Sustainable Aviation Fuel = SAF)というはすでには従来の化石ジェット燃料と比べ、ライフサイクルベースで温室効果ガスの排出を70%超削減するそう。しかし、LanzaTechの燃料に限らずどの持続可能な航空燃料も、通常の化石燃料のものと混合で使われることがベースとなっていて、現在は多くても半分までの置き換えとなる。
もう半分分を置き換えるという課題に加え、まだ価格が化石燃料由来の燃料より圧倒的に高いこともネックである。行政の後押しがないと、大手が自社のカーボンオフセットも踏まえた投資をするところから次の段階へ進めないであろう。ノルウェーでは、2030年までに30%の航空燃料を持続可能にして、短距離便は2040年までに100%電気にすることが義務付けられた。カナダでは、使用された燃料の量に基づき、国内線に炭素税を導入するなど、今後は航空会社の便数計画も影響を受ける可能性がある。
2019年のBBCの調査によると、大手航空会社の半分未満が乗客にフライトから発生するカーボンオフセットの手段を提供している。また、そのオプションがある場合でも、オフセットのために追加の料金を払う乗客はたったの1%。他の手法で個人的にオフセットする人もいるが、ここは企業主導で進める必要がありそう。
🔑キーワード「カーボン・オフセット」
温室効果ガスを、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)による削減活動によって「他の場所」で直接的、間接的に吸収しようとする考え方や活動の総称。
💸お金を使えば使うほど、気候変動へのアクションができる?(3min)
Forbesの”Climate Fintech Is Coming”という記事が非常に面白いものだった。気候変動に焦点を当てたフィンテック製品や企業『Climate Fintech』が昨年から爆発的に増えており、金融サービスとのイノベーションは今後も拍車がかかる可能性がある、と。
Climate Fintechのサービスの中でも、大きく「企業向け」「個人向け」に分かれる。例えば、「企業向け」として記事に紹介されている、インターネット上の決済サービスを提供するStripe社による気候変動対策ツール「Stripe Climate」というサービスがある。このツールを使うと、オンラインビジネスの収益の一部を、二酸化炭素排出量の削減を目的とした4つの会社の新興技術に振り分けることができる。すごいのは、このサービスが外部の専門家達と連携を取りながら、重要な炭素技術4つを評価し、選定してくれるところだ。実際に、ヨーロッパでは100社以上が登録している。
「個人向け」金融サービスは、アプリ上で自分の支出だけでなく、サービスを通して環境に与えたインパクト(植えた木の量など…)が可視化され、確認可能なものが多いことが特徴だ。例えば、消費者が選んだ設定の範囲で環境団体に自動的に寄付できるアプリ「Gen E」というものがある。他、桜の木で作られた木製のデビットカード「TreeCard」では、カード会社の手数料による収益のうち8割を植林事業に当て、60ドルごとに一本の木を植える。普段から馴染みのない人にすれば、寄付や投資はやり方がわからずハードルの高いものに見える。しかし、「自分の支出の確認ついでに」のように、習慣に組み込めるきっかけがあると、気候変動へのアクションもより身近になるのかもしれない。
銀行での今後注目したい取り組みは、「世界初の気候危機に立ち向かう銀行」として今年以内に立ち上がる予定の「Climate First Bank」だ。これは、企業向けだけではなく個人向けの投資や寄付も扱う銀行となっている。現在、UNEP Finance Initiative(国連環境計画・金融イニシアティブ)と協力して、気候変動関連の開示を準備するための能力開発プログラムを実施している。イノベーションだけでなく、それをサポートするステークホルダーとしての金融機関での取り組みも注目していきたい。
これらのClimate Fintechがビジネスとして持続的な利益をあげられるのかは課題になる。例に挙げた「TreeCard」もカード手数料の高いアメリカを主要なマーケットと置くことで、植林事業などの費用をカバーしていくと説明している。しかし、別のマーケットにこのようなモデルがどれほど使えるか。各国に合う形のClimate Fintechがどのようなものか、考える必要がありそうだ。
🥩3Dプリンターから生まれるプラントベースミートはホンモノそっくり!?(2min)
『Alt-protein』の世界が盛り上がりを見せている。”Alt”はalternative -代替の- の略なので、「代わりのタンパク質」となる。私たちが普段とっているタンパク質源は大豆以外は肉や魚の動物性、植物性であると大豆などであるが、動物性食品(とくに牛肉などの食肉)は環境負荷が高いことが問題視されている。
動物性タンパク質源の代わりに植物性食品を摂る人達はベジタリアンやビーガンなど(他にも様々な種類があり、これらのライフスタイルを選ぶ理由も様々だが。)と呼ばれ、最近は日本でもビーガン対応のレストランも増えてきている。筆者もフレキシリアン(基本的には植物性食品を食べるが、時には動物性食品もとる、という柔軟なベジタリアンスタイル)なので、店選びに困ることが減ってきて、ありがたい。
DMM HPより
このようなベジタリアンスタイルの生活をする人を支えるalt-protein産業は急速に拡大している。欧州でのフードテックの産業についての調査によると、2020年はパンデミックがあったにもかかわらず、32億ドルもの売上をあげた。培養肉やプラントベースの代替肉を扱うスタートアップ産業に流れる資金は前年比で178%にも上り、スウェーデンのスタートアップであるオーツミルクブランドのOatlyを含めいくつかのユニコーン企業も誕生した。コロナウイルスが拡大した2020年が大きなターニングポイントとなっていて、これからこのalt-protein産業が盛り上がることはほぼ確実だといっていい。研究所よるレポートによると、「2035年までにはalt-protein産業が世界タンパク質産業シェアのうち、22%を占めるだろう」と結論付けている。この領域は恰好のESG投資機会なので、世界の動きのみには留まらず、日本の企業も参画していくだろう。例えば、DMMがプラントベースを中心とした商品開発・コンサルティングをする部署を立ち上げたり、ミツカンが伊東ハムが「まるでお肉!」と呼ばれる大豆ミートを発表したり…日本でも今後も広がっていきそう。
世界を見渡すと、「クリーンテックのスタートアップのハブ」と呼ばれるイスラエルでは、Redefine Meatの3Dプリンターで作るプラントベース肉が注目を集めている。プラントベースの原料から作られた”インク”によって、ステーキを”プリント”するのだ。同社によるブラインドテストによると、90%の人が「ホンモノの肉に遜色ない」と言っている。見た目、触感、味や舌触りまでホンモノの肉そっくり。波にのったRedefine Meatは香港とNYのVCから約2,900万円の調達に成功し、alt-protein産業に追い風を吹かしそうだ。ベジタリアンの人もそうでない人もぜひ一度試しにプラントベース肉を試してみてはいかがだろうか…?思っているより悪くないかも?? (参考:green queen)
(参考:Israel21c, The Times of Israel)
🎬もう見た??Netflix ドキュメンタリー “Seaspiracy”(4min)
気候危機、と聞いて溶けていく氷に乗った寂しそうな顔したホッキョクグマがぷかりぷかりと行き場をなくして浮かんでいる姿を連想する人はどれくらいいるだろう?今までこのようにどこか遠くの世界の話として語られることの多かった気候危機の問題だが、最近は「私たち一人ひとりがどのように気候変動に加担しているのか」という目線で語られることが増えてきたように思う。最近Netflixで公開されたドキュメンタリー映画「Seaspiracy」もその一つである。32か国でトップ10に入っているこの話題のドキュメンタリーでは、今まで注目されることが少なかった漁業にスポットライトをあて、世界で行われている乱獲、それによる膨大な数のサメやイルカの虐殺の真相を明らかにし、海の生態系が地球環境の保全にどれほど重要であるかを訴えている。日本がこの領域で海外ドキュメンタリー映画に取り上げられることは少ない(2009年にアカデミー賞を受賞したThe Cove以来だろうか。)が、和歌山県太地町で行われているクジラ漁やそれに伴うイルカ・サメの”虐殺”についてもフィーチャーされているので、是非見てみてほしい。
「サステナブルな漁業は存在しうるのか?」
プラスチックが海洋環境にとてつもない悪影響を与えていることは、自明である。様々な国でシングル・ユースのプラスチックが禁止されたり、日本でも買い物袋が有料化されたのは記憶に新しい。だが、このドキュメンタリーでは、海に浮かんでいるプラスチックやマイクロプラスチックの約50%は漁業廃棄物や釣り道具から来ており、それに対しプラスチックストローが占めるのはわずか0.03%だという。漁業は世界的に現在ほとんど規制がかかっておらず、「サステナブルな漁業」を謳っている漁船で行われている漁業スタイルもどこまでサステナブルなのかは全くわからない、と制作者は疑問を呈している。
見落とされがちな漁業が環境に与える影響の大きさ、またフィレオフィッシュについているMSC認証に代表されるような各認証がついていれば環境にいいものだ、と勘違いしてしまう消費者のグリーンウォッシュ的マインドの危険性にも触れられている点では、イシューについて強く問題提起している良いドキュメンタリーと言える。だが、大袈裟な演出や一つの立場のみからの議論を展開しているプロパガンダ的描写も散見され、多くのNGOや環境保全団体から批判の声が上がっているのも事実である。ドキュメンタリー制作者にしろ、NGO団体にしろ、誰しもそれぞれ意図を持っている。どの意見を信じるかはぜひ一度自分の目でドキュメンタリーを見て、リサーチし、自分で決めてみてほしい。そして周りの人とカジュアルに話してみてほしい。きっとそれすらも気候危機への一歩になると信じて。
(参考:green queen)
(参考:MCS認証:Seaspiracyへのオピニオン)
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