🌎バイデン気候変動サミットはムーブメントになったのか?|🌞太陽光発電できるスタイリッシュな屋根
05/12 bility newsletter
🌎今日のニュースレターは…?
「気候変動サミットってあんまりニュースで見なくなかった?」(6min)
Sunroofの太陽光タイルで家を丸ごと発電所に⁈(2min)
食品の半分が廃棄されるカナダで問題視されるメタンの排出(3min)
editor's note (2min)
「気候変動サミットってあんまりニュースで見なくなかった?」(6min)
bility編集部の話し合いででた何気ない一言だった。たしかにそうだったかもしれない。アンテナを張っている人にとっては関心の高いニュースだったけれど、朝や昼のニュースで見たかというと、見なかった気が…。4月22日のアースデイ、そして先の気候変動サミットで掲げられた各国のアクションに対して、前後で多くのムーブメントがあった。
みなさんは「3.5%ルール」というものを聞いたことがあるだろうか?
これはハーバード大学の政治学者 エリカ・チェノウェスさんが提示した数字で、20世紀の数百に及ぶ市民活動をしらみつぶしに調べたところ、
非暴力な活動は暴力的な活動に比べて成功率が約2倍になる
活動に賛同する人の数が人口の3.5%以上に達した場合、失敗した前例がない
という驚くべき結果が得られた、というものだ。平和的活動から実際に制度改正がおこったり、世論が変わったりしていると思うと「気候変動においても実現できるんじゃないか」という思いが高まる。また、3.5%という具体的かつ比較的現実的な数字を提示されると、「このムーブメントは成功するのだろうか?」という不安や実現可能性そのものではなく、「如何にその人数を達成しようか」という方法論のほうに目が向く。海外ではバイデンサミット起点のムーブメントが多々見られたが、日本ではどうだったのか。
気候変動を理解するのには避けて通れない、バイデン気候変動サミットに関する日本の国家単位の動きや、市民のこえをまとめてみた。
✋気候変動サミットとは
その前に、すこし気候変動サミットの概要に触れておこう。
4月22日〜23日にかけて開催された、バイデン米首相主導のオンライン首脳会談のことだ。各国首脳26人を含む40名が参加した。11月にイギリスで開かれるCOP26を見据えた会議内容だ。特にSession1で発表された各国の気候変動目標は、 世界でも日本でも議論の的となっている。
🔥日本では政府と市民がバチバチバトル??
気候変動サミットを受け、日本ではどんな動きがあったのだろうか?様々な意見が飛び交った先2週間の声をまとめてみた。
<政府の対応>
前述したとおり、日本政府は23日にNDC46%を発表。アメリカが求める50%以上のNDC設定には満たなかったが、実現可能性も加味された意欲的な数字となった。賛否両論あるけれど。(政府内での足並みも揃っているとは言い難い状況なので)この数値目標をどのように具体的な施策に落とし込むかが今後の焦点に。
<市民のこえ>
Climate Action Trackerによると、日本は少なくとも2030年までに温室効果ガス排出量を62%削減する必要がある。この目標数値は、各国のパリ協定に向けたフェアな貢献を計算したものであり、国によって異なる。今回の「野心的な目標である」46%と比較すると、16%もの差…。
国内のアクティビストたちからは、「新NDCは国連1.5度目標を到底クリアできない!」という激しい批判が多数上がった。中でも、Peaceful Climate Strikeという平和的ハンガーストライキ運動は注目を集め、日本での気候変動ムーブメントを加速させたと言えるかも。
🤔1.5度目標とは?
2015年のCOP21で決定された「地球の上昇温度を産業革命時と比較して、1.5度に押さえる、という努力目標。1.5度の上昇だけでもかなりの影響が見られ、この目標は国際社会で必ず達成すべき急務とされている。
Greenpeace、Peaceful Climate Strike、PCS NOTE、中村涼夏さん
■ Our thoughts
日本のClimate Liveなどの学生発の音楽配信イベントやPeaceful Climate Strikeなどのコミュニティ参加型アクション。どちらもハッシュタグを見ると、いかにシンプルな問いかけをしているかがわかる。
#ウチらの声で世界は変えられる
#気候変動を止めよう
今まで気候変動に関心がなかった人や、どのように参加すれば良いのかがわからなかった人々にとっても、わかりやすい第一歩のアクションになったのではないだろうか。今年のもう一つ大きなマイルストーンは11月に開催予定のCOP26だが、この熱意を引き続きもって議論を続ける必要がある。
実現可能性や国際的な立場、国内既得権益への配慮など数々のファクターとの間で天秤を取ろうとする政府と、「そのような配慮をしていたら地球が滅びてしまう」と警鐘をならすアクティビストからの意見が強く拮抗していることが見て取れる。
実際は世界中で全員が同じようなゴールに向かっているはず。しかし、「Biden seeks to reestablish US leadership on climate with Earth Day summit」などの記事も見かける。米国が2030年に温暖化ガスの実質排出量を05年に比べて50~52%減らすことで気候危機に対する動きをリードすることを目的にするだけでは足りない。歴史的にCO2を大量排出してきた国は、それに伴う削減をする必要があり、さらに、経済的な力を持っている国がそうでない国をサポートして、気候正義(climate justice)を取得する方向に動かなければならない。
経済性を保ち、今の生活に不便を及ぼさずに、地球を守る。このようなことについてステークホルダーが対等に意見をかわしている場は現在はSNS上だけなのではないだろうか?今後は、散乱している意見が集約される場があれば、みんながより同じ方向を向いて進めるのかもしれない。関心が高まっている今の動きを逃さないためにも、bilityは、既得権益など現存するしがらみを乗り越え、これからやるべきことを対等に議論する機会を作り上げる必要性を感じている。
🌞Sunroofの太陽光タイルで家で丸ごと発電所に⁉(2min)
■ Basically...
スウェーデン発スタートアップであるSunroofが約5.9億円の調達。機能性とデザイン性を両立させたソーラータイルで屋根を葺くことで、一般家屋を発電所に様変わりさせることができる注目エネルギーテックだ。
■In detail
従来の太陽光パネルは、屋根との配色が合わなかったり、ずんぐりと目立ってしまうのが(少なくとも筆者には)課題のひとつであった。これに対し、Sunroofは「機能やデザインを損なわずに、再生可能エネルギーへの移行を容易にし、さらに費用対効果の向上を実現する」ために創業した、とファウンダーのKaniuk氏は語る。
このように、従来の太陽光電池は、最小単位であるセル、それを集め板状にしたモジュールが必要だった。だが、Sunroofは「モジュールを必要とせず、2-in-1ソーラールーフと魅力的な外観で構成され、1.7㎡の大きなガラス板2枚に挟まれた単結晶太陽電池を使用する」…らしい。なにやら難しく機能を紹介してしまったが、従来のパネルとは異なり、太陽光 "タイル" なので、接続部分がかなり小さく、同時に表面積が大きくなる。そのためデザイン性も担保でき、さらには安価で迅速な施工が可能になるのだとか。
英国のGuardianによると、現在太陽光発電は世界の3%のエネルギーを占めており、2050年までに23%を占めることが予想されている。BloombergNEFのChase氏は「私たちは既に世界中の多くの場所でソーラーが最も安価な発電手段になるところまで到達した。太陽光が発明された当時の批判を鑑みると、長く地道な努力が予想もできなかった状況を実現できることを証明したといえる」と述べている。
驚くことに、Sunroofは前年比500%で成長しており、TeslaもSolar Roofという類似ビジネスを展開している。各国NDCの実現に向け、太陽光を推進するのは明白な中、2030年までに3,334億円(!)にも拡大するとも試算される今後のソーラー市場でどのようなイノベーションが生み出されるのか。引き続き注目していきたい。
■ Our thoughts
日本は気候変動サミットを受け2030年までに46%のGHG削減を目指すことを発表。小泉環境相は「再生可能エネルギー(再エネ)への移行がとくに重要なんです。東京のビル群も太陽光で埋まりますよ」と、太陽光の重要性を強調した。安価でエネルギー効率も良い太陽光発電は注目度も高いものの、現在日本のエネルギーミックスの中で占める割合はたったの7%にすぎない(再エネ全体は、22~24%)。WWFジャパンの試算によると、太陽光率いる再エネで全体の50%程度を実現しないと、1.5度目標はクリアできない。
果てしなく長い道のりが予想される再エネへの転換だが、Sunroofのようなイノベーションが再エネ導入への消費者のハードルを大幅に下げてくれると期待している。「屋根=ソーラータイル」が当たり前になる世界ももうすぐそこかもしれない。
🍅食品の半分が廃棄されるカナダで問題になっているメタン排出(3min)
■ Basically...
4月13日にカナダでは食品廃棄法案が提案された。食品廃棄物は埋立地におけるメタンが深刻な問題となっている。カナダではメタン排出量の20%は、食用の食品廃棄物によるものであるため、気候変動対策として食品廃棄物の削減が重要となっている。
🤔生ごみはなぜ環境によくないの?
生ごみを埋め立てると土に戻るというイメージがあるかもしれない。コンポストのように微生物が生ゴミを分解する様な環境ではないので、生ゴミを埋立地に入れることはかなりの環境負荷になってしまう!
……ちなみに、日本の生ごみは水分を大量に含んでいることが多い。水分量の多いゴミを燃やすのには大量のエネルギーを必要とし、かなりの環境負荷になっているとか。
■ In detail
National Observerによると、カナダでは生産される食品の半分が廃棄されており、約5,650万トンのCO2排出量を生み出している。そして、4月13日、カナダでは食品廃棄物法案が提出された。内容は、毎年10月16日を「全国食品廃棄物啓発デー」として指定し、カナダの食品廃棄物を削減するための国家戦略の策定と実施を規定している。
食品廃棄物と気候変動はどのように結びついているのだろう?埋め立て地にきつく押し込められた生ゴミはメタンを発生させる。1トンのメタンは、20年間で二酸化炭素の84倍の温暖化効果があると言われている。カナダのメタン排出量の20%は、食用の食品廃棄物によるものだそうだ。
ここで、ビジネスで食品ロスに立ち向かう企業を紹介したい。最近では、Misfits Marketが2億ドルを調達したことが話題となった。
農家から見た目が理由で通常の店に出荷できない農家物を引き取り、割引価格で販売するサブスクリプションサービスだ。日本では、Letというサービスが最近注目されている。通常の販売ルートに流せない訳ありの新品を売買できるECアプリだ。プレスリリースによると、コロナによる食品ロスの増加により、企業側の需要が増えているそうだ。
■ Our thoughts
今回は紹介しきれなかったが、日本では食品ロスに対するサービスが多数存在しており、国でも積極的に取り組んでいる分野だ。しかし、環境問題の温度感が高くない人にとっては、まだ縁遠いサービスになっている点は否めない。意識の高い人が使うものではなく、普段から買い物での選択肢の一つとなるような、日常に溶け込むサービスとなる工夫が重要かもしれない。
📚Editor’s Note
今回は、普段のclimate techに関するアイディアや事例の紹介に加え、特別編として気候変動サミットについて取り上げた。bilityが目指しているのは、『climate techに関する海外のワクワクする先進事例をキュレーションするニュースレター』である。
というのも、世界的に注目されている気候変動をテクノロジーで解決しようとするclimate tech分野は、日本ではまだ世間の温度感が低いのが現状。その中で、climate techのアイディアを必要な人に届けることで、気候危機へのアクションを加速させたい。これが bility を立ち上げたきっかけだった。
でも時流に沿った、革新的なアイディアを生み出すためには、気候変動サミットのような未来を大きく動かす各国の動きや、それがどのような意味を持っているのか などを知ることも同時に重要である。読者の皆さんがアクションのタネを育てるのに必要な情報を、bilityがそっとお届けできれば嬉しい限りだ。
About -bility
bilityは気候変動のソリューションとなるテクノロジー&アイディアに関する情報不足を解消するため、世界のClimate Techに関する先進事例やワクワクするような情報を集め、キュレーションしていきます。共に学び、考え、アクションの種を育てていく。これがbilityの目指すゴールです。
bilityはまだ始まったばかり。みなさんの率直なフィードバックをこちらのアンケートフォームから届けていただき、ともに学び、成長していきたいと思っております。是非お気軽にご回答お願いいたします!
※アンケート回答は5分程度で終わります。