🔥プロメテウスが地球を救う日
06/23 bility newsletter
bilityは、世界中のclimate techを中心とした事例やニュースを日本語でお届けするニュースレターです
🌎今日のニュースレターは…?
深刻なトイレットペーパーの大量消費を竹で解決するゲーム会社(3min)
ネットゼロのガソリンを発明した米スタートアップ(3min)
おはようございます。
梅雨入りでジメジメしてきた天気が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
bility編集部では、先週開催された2年ぶりのG7サミットが記憶に新しいです。英国コーンウォールに対面で集まったリーダーたちは、最終日には気候・環境問題をテーマに議論を行い、発展途上国が二酸化炭素量の排出を削減するため、10兆円/年を投資することで合意しました。また、議長国であるイギリスは特に気候・環境分野への精力的な取り組みで知られ、NDC(二酸化炭素量国別削減目標)は90年比で68%に設定しています。
今日のニュースレターはそんな環境先進国のイギリスと独自路線を貫くオーストラリアのニュースから。
イギリス政府、二酸化炭素削減計画を発表していない企業への委託を引き上げる
ネットゼロ宣言/CO2削減計画を発表していない場合、年間約7.1億円に相当する国との契約を破棄される
ビジネスセクターのCO2削減をより加速させるために、年間約44兆円を拠出する
世界初!オーストラリアの連邦裁判所が政府は若者を気候危機から守る義務があると判定
10代の若者8人が始めたこのケースでは、「世界で初めて気候変動により将来世代に害を与える可能性があるような政府の動きを禁止する」という判決が出た
これにより、豪政府の石炭事業(なんと豪のCO2排出量の20%を占めるという…)への支援は打ち切られる可能性も
🎋深刻なトイレットペーパーの大量消費…竹で解決に挑むスタートアップ(3min)
■ Basically...
ゲーミングデバイスメーカーRazerは、5,000万ドルの「Razer Green Fund」を新たに立ち上げた。その最初の投資は、トイレットペーパーのグリーン化に焦点を当てたシンガポールのBambooloo社にて行われた。
■ In detail
Razer社は、持続可能なスタートアップ企業を支援する計画の一環として、「Razer Green Fund」を立ち上げた。また、2025年までに100%再生可能エネルギーを採用し、2030年までに100%カーボンニュートラルを達成するという10年間の持続可能性計画である「#GoGreenWithRazer」イニシアチブも立ち上げている。
この「Razer Green Fund」を通じて、シンガポールのBambooloo社に初めてグリーン投資を行った。Bambooloo社は、持続可能で費用対効果の高いトイレットペーパー、フェイスティッシュ、キッチンタオルの代替品を消費者に提供する会社だ。
最近のレポートによると、2019年のトイレットペーパーの世界市場規模は261億4,000万米ドルで、2027年には383億4,000万米ドルに達すると予想されている。シンガポールでは毎月約2,800万ロールの需要があり、これは一人当たり5ロールにも値する。
このようなトイレットペーパーの消費は、環境に壊滅的な影響を与え、世界の森林破壊の15%を引き起こしていると言われている。例えば、木材パルプ製のトイレットペーパーを1ロール作るために、140リットルの水と440グラムの炭素が必要になる。
竹から作られたトイレットペーパーを提供することで、廃棄物問題と気候危機の両方に取り組むことをミッションとしている。竹は樹皮に炭素を蓄える他の樹木とは異なり、根に炭素を蓄えるため、伐採しても大気中に炭素を放出しないという特徴がある。
Bamboolooは、再生可能な低炭素素材を使用しているだけでなく、100%プラスチックを使用しない最終製品を作るため、従来のものに比べて水の使用量を90%、炭素の使用量を70%削減している。同社によると、4人家族が同ブランドのトイレットペーパーに移行した場合、毎年30,000リットル以上の水、74,000グラム近くの炭素、65平方メートル以上のプラスチックを節約することができるそうだ。
■ Our thoughts
世界のトイレットペーパーや紙おむつなどを取り扱う衛生用紙市場の90%以上は巨大な多国籍企業によって占められている。記事によると、彼らは木材パルプのトイレットペーパーを供給するために、1日に27,000本以上の木を伐採し続けている現状だ。トイレットペーパーの消費量が地球に与える影響については、考えたことのある人は少なかったのではないだろうか?(筆者自身は考えたことがなかった。)今回、紹介することで日用品の環境への影響を考えたり、日本の有名な日用品企業の動きをチェックする機会になれば幸いだ。
🔥あなたの車でも使える、ネットゼロの
ガソリンを発明した米スタートアップ (3min)
■ Basically…
シリコンバレースタートアップのPrometheus Fuelがネットゼロのガソリンを開発。販売に乗り出した。
■ In detail
イエール大学卒のMcGinnis氏が創業したクリーンテック系スタートアップPrometheus Fuelsは、ダイレクト・エア・キャプチャ技術により空気中の二酸化炭素を抽出し、それをガソリンに変換する技術を開発した。この企業は「化石燃料を卒業し、空気中のCO2からガソリンや飛行機燃料をを作り出す」ことを目標にしており、この技術が地球に与えるインパクトはかなり大きい。仮に現在使用しているガソリンを全てPrometheus社の製品に代えた場合、世界の25%のCO2排出が削減できるとされている。
さらに、現在使用されている標準車にもなんの調整もせずにそのまま使用可能だという。この技術はBMWも支援しており、「気候変動に立ち向かうのに最も高レベルの技術のひとつ」と評価している。BMWは実際に12億円もの巨額をこのスタートアップに投資している。
一方で、この製品を疑問視する声も。英のIdtechExが発表したレポートでは「ダイレクト・エア・キャプチャ技術は気候変動に影響を与えるくらい広範囲の実装までは多くの時間がかかる」と述べた。だが、Prometheus FuelsのCEOはHPにて「来年度よりJet Aにて、0.01ドル以下の金額にて販売を開始する」と発表。さらに、新技術により100,000ガロンの燃料を代替することができ、約4,450トンのCO2を削減できる、と自社製品のインパクトを強調した。
■ Our thoughts
ニュースレターの冒頭にも記載したが、最近の政治的な動きを見ていると、2050年のカーボンニュートラル宣言をクリアしようと各国が躍起になっていることが見て取れる。なかでも莫大なCO2の排出をしている航空業界は、はやいうちに脱炭素化への転換を求められることは確実だろう。
しかし、ここで立ちはだかるのは重量の問題である。飛行機は揚力と重力の絶妙なバランスによって空中を移動するため、重すぎるバッテリーは命取り。以前のニュースレター(5/26配信)でも紹介したが、こうなると航空機に残された選択肢は、水素燃料かSAF(sustainable alternative fuels -サステナブル代替燃料)と呼ばれる燃料の2つだけ。だが水素燃料のエネルギー効率は化石燃料やSAFには遥かに及ばない。燃費の観点では、今回紹介したようなSAFは実装に向いており、今後多くの航空機に使用されるであろう。
ちなみに、社名にある「プロメテウス」はギリシア神話にて人間の世界に火をもたらした神のこと。果たして彼らは気候変動という危機にさいなまれた人間たちを助ける救世主となるのか…これからも注目していきたい。
📚Editor’s Note
今回はトイレットペーパーやガソリンなど、生活に身近なプロダクトを扱った事例を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?bilityでは各メンバーが「みなさんに紹介したい気候変動に関するワクワクする事例」を持ち寄り、話し合い、ニュースレターを作成しています。毎号アップデートされているニュースレターを通して、私たちが試行錯誤している様子は読者のみなさんにも伝わっているかもしれません。bility編集部は専門家の集まりではなく、気候変動に関心がある20代社会人の集まり。だからこそ、共に気候変動について、ワクワクしながら考えるきっかけになるようなニュースレターを作っていきたいと考えています。それでは、また次号でお会いしましょう。
bility編集部
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About -bility
bilityは気候変動のソリューションとなるテクノロジー&アイディアに関する日本語での情報不足を感じたことから立ち上がったメディアです。世界のClimate Techに関する先進事例やワクワクするような情報をキュレーションしています。共に学び、考え、アクションの種を育てていく。これがbilityの目指すゴールです。