🎬もし隕石が衝突すると言われたらあなたはどうしますか?~Don't look up review~
(画像作成:bility、ポスター:IMDB, 01/20/2021)
おはようございます🌞 どんどん寒くなって来ていますが、みなさん体調はいかがでしょうか?先日Netflixで大人気の映画、Don’t look up を見ました!この映画はただのSF映画ではなく、現代の気候危機をめぐる状況を示唆していると話題になっています。今回のNewsletterは少し長い特別版、Don't look upのbility独自レビューをお送りします!
■ Don’t look upってどんな映画…?【あらすじ】
豪華キャストレオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスが演じる天文学者ランドール・ミンディとケイト・ディビアスキーは、地球に衝突する軌道上にある彗星(=巨大隕石のようなもの)を発見する。この彗星は約6ヶ月後に地球に衝突する計算であり、その衝撃で恐竜時代のように一瞬で地球が滅亡してしまう威力を持つと推定。二人はこの大事件を政府やメディア、全世界に知らせようとするが、真剣に取り合ってもらえない。
彗星は本当に落ちるのか?世界はどうなってしまうのか?
この ”実話に基づくかもしれない” 物語は、今の気候危機に対する私たちの現実社会の対応と類似している部分が多いのではないか。監督アダム・マッケイはまさにこの気候危機に関して数十年にわたって訴え続けた科学者たちの「もどかしさ」を絶妙に表す作品を作り上げた。(WIRED)
■ 気候変動の文脈でこの映画がどのような示唆をもっているのか?
(🚨危ない!ここからネタバレを含みます。)
(gif: Tenor.com, 01/23/2021)
超豪華キャストを多数揃え、最大のエンタメプラットフォームであるNetflixで沢山の人に見られているDon’t look up。観客のなかにはディカプリオ目当ての人もいたようですが、結果的に多くの人が気候危機に関する映画に触れたということは製作陣の狙い通りかもしれませんね。
この映画の一番の魅力は、なんと言っても全編において繰り広げられるサタイヤ(皮肉や風刺表現のこと)です。映画では、現代社会の気候危機に対する対応の遅さ、アメリカ合衆国の政治家や大企業のアクションの少なさ、綺麗事ばかりを取り上げるメディアなど、現代社会の問題点を暗に揶揄しています。bilityでもこの映画について議論をしたので、特に印象に残った4つの視点(メディア、政府と大企業、エンディングのもつ力、 メッセージと世間の反響)から私たち独自の考察をお届けしたいと思います!💌
メディア
(画像:IMDB, 01/20/2021)
この主人公の一番のもどかしさは、メディアに真剣に取り合ってもらえない、というところですよね。映画の中では、彗星衝突を地球危機として訴えかける科学者と、単なるトピックの一つとして取り上げるメディアとの衝突が見えました。それを踏まえて気候危機とメディアに関してbility メンバーと対談した結果、以下のポイントが議題に上がりました。
地震などの災害に関しては即座の行動を促すため事実を深刻に述べている
しかし、気候変動ではそのような緊急性は認められず、ある種の楽観性が感じられる
気候変動が災害として捉えられていないのではないか?
さらに、気候危機にニュースバリューがあると認められても、それを「沢山あるうちのひとつの社会問題」として扱うべきか、それとも地震などのように緊急の災害として扱うべきかという点もbilityでは議論になりました。みなさんはどう思いますか?
アリアナ・グランデ登場のシーンでは、メディアが、地球の危機よりも一般社会の芸能人のプライベートに執着する様子が皮肉的に表現されていました📸。(現実社会でも有名人のプライベートが重要なニュースよりも話題になっていることってありますよね)
2. 政府と大企業
(画像:IMDB, 01/20/2021)
危機を目前に私益を優先する人の姿は、現実社会でも多く目にします。映画内のCEOは莫大な資金を持っており、政府の決断をも左右する権力を握っていました。現実でもビッグオイルと呼ばれる企業の中にはロビー活動を通じて自社に不利な政策の阻止をしようとステークホルダーたちに働きかけている企業もあるようです。(The Guardian)
〜未来のテクノロジーに置かれた絶大な信頼〜
映画内でも、私益を追求するCEOたちは未開発のテクノロジーに絶大な信頼をおいていました。気候変動に関しても2050年までにゼロエミッションを掲げる多くの会社が、現時点のCO2排出量を削減するための政策だけではなく、植林やカーボンキャプチャなどのオフセットを用いたプランを掲げていることが多いようです。(EP)
しかし、温暖化を食い止めるためには、「今この瞬間」の排出量を減らすことが急務です。
このシーンは、まるで30年後のテクノロジーに未来を委ねている企業を揶揄しているよう。気候危機というトピックは深刻にならざるをえない内容なので、このようなコメディ表現は視聴者をクスッと楽しませる内容が多く、映画の良さともいえます。(これは私個人の意見ですが)普段不信感をいだいている権力者を小馬鹿にした表現はスカッとさせるものがありました笑
3. エンディングの持つ力
(画像:IMDB, 01/20/2021)
そして、私が一番好きなエンディングシーン。たわいもない話をしながら食事を囲む主人公たち。ガタガタと衝撃で震えるテーブルを無視しながら、今まで当たり前にあった「日常」を演じ続ける姿には心打たれました。
この映画のエンディングが人類絶滅/地球滅亡という結末でなければ満足出来なかったかもしれません。同じような終末論を描くSF映画のほとんどは最後にハッピーエンドが待っています。なんとか世界中が協力し、テクノロジーが発展し、もしくは一部だけ破壊されようと、主人公と家族だけが運良く助かる、なんていうシーンも珍しくありませんよね😮💨このようなエンディングであれば、視聴者は気候危機も同じように「政府がなんとかしてくれる」「自分には影響ない」「テクノロジーが解決してくれる」とエンドロールの後には映画を忘れいつもの日常に戻るかもしれません。対して、この悲しいエンディングは視聴後の強い危機感を持続させる効果があるように思います。
(画像:IMDB, 01/20/2021)
また、ディカプリオ氏演じるミンディ氏が「We really had it all didn’t we /僕たちは本当に全て手に入れてたんだね」とつぶやくシーンがありました。まさにその通りで、私たち先進国民の大半はとても恵まれた環境に住んでいます。必要な食べ物は街角で買うことができ、飲み水は水道からすぐ手に入る。ゴミは見えないところに捨てられ、娯楽や友人関係に励む余裕もあるし、日常的に災害に怯える必要もない。
彼の一言は、私たちがあたりまえだと捉えている環境への感謝が足りないことに気付かされます。これからの未来、気候危機によってそのあたりまえが手に届かないものになってしまう可能性も見据えなければならない!と決意を新たにしました。
4. bilityが考えるこの映画のメッセージ
「刻一刻と迫る気候危機は、落ちてくる彗星のように “Don’t look up!!” などと否定しても必ず起こる紛れもない事実。私たち地球に住む私たちはなんとしてでも回避しなければならない。」
しかし、このメッセージは気候危機に対して敏感でない人にも伝わるのでしょうか?bilityメンバーのように普段から気候危機に対する不安感を持っている人は、映画を見ることでさらに自分の無力さに対する罪悪感が増えてしまうかもしれません。実際に私はそう感じてしまいました。反対に、この映画を届けたい相手、「気候危機は他人事だ」と考えている人々にこのメッセージは届くのでしょうか?
メディアの効果とは偉大なもので、特に菜食を始める理由としてドキュメンタリーをあげる人も少なくないですよね。これほど話題になったDon’t look upにもそのような効果を期待したいです✨さらに、主人公の二人以外にも、メリル・ストリープやアリアナ・グランデ、ロブ・モーガン、ティモシー・シャラメなどなど知名度の高い豪華キャストが出演しています。そんなポスターに惹かれ、さらに多くの人が見るかも👀そしてこの映画を機に一人でも環境に対して考える人が増えるかもしれません。
反響
世間の反響はというと、環境活動家の間では「まさにこれ」と絶賛されていた印象。
「今年1番の映画だった。」
「気候学者として、僕は毎日Don’t Look Up のなかで生きている。」
その他にも、@climateresilienceproject では、丸呑みしてしまうと危険な表現をとして、以下の二つのポイントを取り上げていました。
①気候危機を遠くの未来の一つの出来事として描いている。
実際はもっとじわじわと危険が迫るもの。災害が増えたり、温度が上がったり、一度の大きな出来事ではない。
すでに気候危機の悪影響を受けている地域が多数ある。
②白人科学者が全ての発端で、彼らを気候危機の最先端の研究を行う英雄として描いている。
気候危機は最近の新しい発見ではなく、何十年も前から訴えられてきている。
例えば、先住民の多くは、昔ながらの作法で自らの土地の良し悪しを理解し、昔から気候変動や化石燃料の発掘阻止を訴えかけてきた。
他にも政治においての右翼と左翼の分裂を表していたり、語りきれない内容のトピックと繋げられる映画だったので、またbilityでももう一度ディスカッションしたいですね〜。アメリカ政治の右翼左翼の分裂は映画ソーシャルディレマでも取り上げられていました。
■おわりに
普段のNewsletterよりも長い特別版を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。みなさんはこの映画についてどう思いましたか?
bilityコミュニティではこのようにメディアに関してのディスカッション以外にもさまざまなトピックに関して対談を行ったり、ゲストをお呼びしレクチャー等も行っております。2月2日にはv-cookの工藤さんをお呼びし、「ヴィーガニズムを広めるには」についてお話を伺う予定です!コミュニティメンバーの一員になってみたい方は、ぜひこちらのグーグルフォームをご記入ください🌸
それでは、また次回のNewsletter で!👋